1. ホワイト管理システムとは? 繊維製品の染色に使われる一部の色素には、特定芳香族アミンを生成するアゾ色素がある。多くの国は、芳香族アミンを有害物質として、それを含有する数百種のアゾ色素の使用を禁止している。消費者の安全、これに関する国際的な基準等を考慮して、日本繊維産業連盟はアゾ色素不使用に関する自主基準を制定し、日本に輸入される大部分の繊維品に対して22種の特定芳香族アミンを使用しない(所定の分析方法による分析により含有量は30mg/kgを超えない)ことを要求し、各製造段階でのプロセスの適正管理とトレーサビリティの明確化によって、市場に流通する繊維製品の安全性の基盤向上を求めている。 この要求を実現するため、ロットごとに製品を分析すればそのためのコストが極めて高くなるし、また、製品の安全性を確認するために製品を100%に分析することは現実的ではない。過大なコストを避け、繊維品の安全を実現するには、川上染色段階からのサプライチェーンでの安全性を管理することが望ましいが、染色企業等の川上の情報は取引の中で企業秘密とされることも多く、仕入先の情報を入手しにくい。また、中日間にわたるサプライチェーンの管理は生産・輸出国である中国側と輸入する日本側の当事者の双方の努力が必要である。 こうした現状を背景に、中日双方の関係者は2年間以上にわたって検討を重ね、最終的に“ホワイトリスト管理システム”を中国側が構築し運営することで合意した。即ち中日双方が連携して合意した内容に基づいた 日本市場向けの“ホワイトリスト資格”を新たに設定し、染色加工の各ロット毎の分析をせずとも消費者に安全安心な繊維製品を提供し、企業のコスト軽減と、中日繊維品貿易の健全的な発展を確保する手段とした。 ホワイトリスト管理システムは染色企業に認証を与える資格登録と、資格コードと不使用宣言書の発行という二つの機能を持つ。 2. ホワイトリスト管理システムが日本企業に対して果たす役割は? 1)特定芳香族アミンを生成するアゾ色素の不使用に関する中国の染色企業の情報をもとに、取引相手から不使用宣言書が入手できる。 2)繊維製品の安全を確保し、日本の業界自主基準に適合することが可能である。 3)トレース可能で、製品に安全問題が発生した場合、川上の染色企業までのトレースできる。 4)サプライチェーンにおけるホワイトリスト認定染工場の情報共有が可能であり、安全情報を速やかに入手できる。 5)信頼性の高いサプライチェーン、優良なサプライヤーとバイヤーを獲得できるチャンスが増える。 3. ホワイトリスト企業とは? CNTACと日本繊維業界が共同で検討し採用された手法、手続きによって認証、登録された、中国国内で染色加工を行う繊維企業である。その企業は、生産する繊維品から所定の試験方法により特定芳香族アミン24物質それぞれが20mg/kgを超えて検出されないことを宣言している。 (ホワイトリスト企業の宣言内容は、自動的に、日本繊維産業連盟の定めた安全性自主基準の特定芳香族アミン22種、基準値30mg?/㎏を満たしている。) 認証の有効期間は1年間。 4. ホワイトリストの役割は? ホワイトリストに認証、登録された企業は、染色した繊維品を納品する際、原則として特定芳香族アミンの検査(分析)が不要。 5. ホワイトリスト企業はどのように認証されたか? 認証の手続き、方法は次の二つの方法がある。 (1)ホワイトリスト資格を与えられた染色企業は、下記の3つの条件を備えている。 ①染色企業はCNTACに「特定アゾ色素不使用宣言書」を提出する。 ②染色企業は、24種の特定芳香族アミンを生成する色素を使用しない自社基準のISO9000認 証を取得している。 ③染色企業はOeko-Tex Standard 100、或いはOeko-Tex Standard 1000認証を取得している。(Oeko-Tex Standard 100については、認証対象商品に限定) 説明:その他の取得している認証については、専門家が審査した上で、ホワイトリスト資格の検査免除条件に追加する。 (2) 上記以外のホワイトリストの認証条件 ①染色企業はCNTACに「特定アゾ色素不使用宣言書」を提出する。 ②染色企業が備えるべき条件 - 使用する染料又は顔料のリストを持っている。
- 使用する染料又は顔料についての安全情報を持っている。
- 繊維品に使用される染料又は顔料の安全情報を速やかに提出できる。
- 生産する製品は、CNTACと日本の繊維関係6団体が共同で認証した検査機関での抜取り分析試験で合格する。
6. ホワイトリスト資格コード、デジタルサイン、デジタル証書とは? 「ホワイトリスト資格コード」とは、ホワイトリスト資格が与えられた企業に、管理システムから自動的に振り分けられた乱数列、「ホワイトリストコード」ともいう。 「デジタルサイン」とは、ホワイトリスト資格コードが川下企業に伝達される際、情報の暗号化を指す。「デジタル認証」ともいう。 「デジタル証書」とは、デジタルサインがついたホワイトリスト資格コードを指す。 7. ホワイトリスト管理システムは、それぞれの使用者にどんな機能を提供するか? 日本の輸入者、アパレル、流通業者、小売業者: - ホワイトリスト資格の真偽を確認する。
- オンラインで中国輸出者の特定アゾ色素不使用宣言書を受信し管理する。
- ホワイトリスト企業一覧表の閲覧、ダウンロード
中国の輸出者: - 川上の染色企業にホワイトリストのデジタル証書を請求する
- 不使用宣言書をオンラインで生成する
- 日本の輸入者に不使用宣言書をオンラインで転送する
中国の染色企業: - ホワイトリスト資格を申請する
- 川下のユーザーにホワイトリストデジタル証書を発行する 中国アパレル/家庭繊維品製造企業:
- 川上の染色企業にホワイトリストのデジタル証書を請求する 川下のユーザーにホワイトリストデジタル証書を発行する
8. 染色企業のホワイトリスト資格コード(デジタル証書)は、どのようにサプライチェーンの中で伝達されるか?  9. ホワイトリスト資格コードの伝達の安全性をいかに確保するか(偽造、不当使用防止可能)? システムの安全性を確保し、偽造や不当な使用を防止するため、下記措置を取る。 1) ホワイトリスト資格コードはホワイトリスト管理システムの中で閉ループ伝達。 2) 川上と川下の取引双方は契約番号を使って、情報の真偽を確認する。 3) 具体的契約の必要に応じて、サプライチェーン各段階の企業は、情報伝達の際に情報を暗号化する。 4) 企業が川下ユーザーにホワイトリスト資格コードを伝達する際、暗号化の有効期限を設定可能。 5) 企業がホワイトリスト資格コードを使う時、システムは自動的に川上段階の企業に関係情報をフィードバックする。 10. ホワイトリスト管理システムの監督と最適化は如何に進めるか? 1)ホワイトリスト資格の有効期間内に、抜き取り検査を実施する。違反製品が検出た場合、ホワイトリスト資格を取り消す。 2)ホワイトリスト資格の染色企業・工場を実地調査し、虚偽などの不正が発見された場合、ホワイトリスト資格を取り上げ、違反原因の解消を図る(改善すべきところがあれば改善させる)。 3)日本で不合格品が検出され、ホワイトリスト企業の責任が確認できたら、ホワイトリスト資格を取り消す。輸出業者やサプライヤーの責任が確認できたら、システム登録・使用権を取り消す。分析機関に責任が起因する場合、分析機関の当システムでの認定資格を取り消す。 4)企業製品の安全問題情報、特にEUに輸出した製品の安全問題情報を収集する。安全問題の発生の多い企業に対して、抽出検査回数を増やし、ホワイトリスト資格やシステム使用権を取り消す。 5)顧客評価コメントをサポートする(情報フィードバック) 6)ホワイトリスト資格又は使用権が取り上げられた場合、一年内の再申請は不可。そしてその違反情報を公表する。 11. 中国にある染色企業数は?ホワイトリスト資格取得社数は何社と予想される? 出荷統計からみると、2010年12月において、年間売上500万元以上の綿・化繊の染色プリント加工企業は2345社ある。2011年10月まで、年間売上2000万以上の綿・化繊染色プリント加工企業は1796社ある。ホワイトリスト管理システムは日本市場に直接輸出する織物やアパレル・家庭用繊維品を取り扱うニット、先染プリント企業等を管理対象とする。最終目標はすべての対日生産・輸出の染色企業をカバーすることだが、CNTACは2012年12月まで、800社~1000社の染色企業を加入させることを当座の目標としている。 12. 現在までにホワイトリスト加入した企業は何社? CNTACでは、2011年4月から先行受付を開始したが、東日本大震災の影響により日中間の協議が遅れ、重要事項での日本との合意が2011年11月となり、12月15日の日本側関係者への説明会後に正式に受付を開始した。日本側の自主基準の本格的実施につれて、中国側の実行を加速化する。中国印染行業協会に加盟する染色企業2000社の中、2012年12月までに800-1000社へのホワイトリスト認証を目標としている。 13. このシステムに参加するのは強制的であるか?中国で不参加の企業はあるか? ホワイトリスト管理システムは日本の自主基準を対応するためのものである。日本企業はユーザー側であるので、中国側の企業の参加はそのユーザーとしての日本企業からの要請が必要である。日本側からシステム利用の要請を出せば、中国側企業の利用の拡大が誘導される。 14. 日本の輸入業者・アパレル業者・流通業者にとって、中国の輸出業者の不使用宣言書は安全管理を意味しているか? ホワイトリスト管理システムは繊維品安全に対して有効な管理を実施するために構築したシステムである。ホワイトリスト資格のある染色企業は厳格な基準によって認証された企業である。また、染色企業のホワイトリストコードの伝達は厳格にプロセス化され、デジタル暗号化を施されている。輸出者の不使用宣言書に記載されるホワイトリスト資格コードの真実性を根拠にしている。契約製品は非ホワイトリスト染色企業により加工された場合、輸出者は不使用宣言書に製品の分析報告を添付しなければならない。よって、輸出者の不使用宣言書があれば、安全性が確認されていることを意味する。 もちろんこのシステムにおいても絶対というはない。ホワイトリストシステムの信頼性を更に高めて、想定外の問題発生を避けるため、ホワイトリスト資格の有効期限内に、ホワイトリスト企業の製品に対して抜き取り検査を実施する。また、日本側も日本市場で抜き取り検査を実施する。サプライチェーンの各段階にある企業がシステムの最適化に参加することで、繊維品の安全性確保とサプライチェーンの改善と最適化を図ることができる。 |